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「さあ、早いもので放送終了時間がやってまいりました。『死神女』の予言が気になるところではありますが、来週も元気な姿を見せたいと思います。それでは、良い夜を。さようなら」
田島の締めの挨拶で放送は終了した。番組の放送時間中、別段の異変は起きなかった。同時に、ふうとガラスの向こう側でスタッフが胸を撫で下ろすのが田島には見えた。
「だから言ったろ、愉快犯だって」
大森が胸を張った。
――そうだ、これは愉快犯だ。間違いない。
田島は確信を持っていた。このメールが本物の『死神女』からのメールではないということに。
なぜかというと非常に簡単な話だ。彼こそが『死神女』であるからだ。
彼は『死神女』の名を語り、己の出世に邪魔な人物を手に掛けてきたのである。いずれも殺人ではなく不審死。これがポイントだった。
口承伝聞において、『死神女』という怪物に現実味を持たせるには、殺人よりも不審死に見せかけた方が遥かに効率が良いのだ。
そうして、最後にはパーソナリティである勝木を殺めたことにより、彼のシナリオはほぼ完成していた。連続する不審死と『死神女』というオカルトの相乗効果で、勝木の跡目を引き受けようという気概ある者が減っていたのである。
田島の築き上げた夢の城は血塗られていた。そのことを知っているのは当事者のみである。『死神女』がやったことにさえすれば、全ては不審死で片付くのだから。
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