スイッチ

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「俺はあるよ」 「やっぱりうっすらと見えるんですか?」と幸子。特徴的なハスキーボイスは聞き心地が良いと専らの評判である。 「いやいや全然」  リスナーには見えないが、大森は大げさにかぶりを振った。 「はっきりと見えるらしいよ。霊かどうか気付かないんだってさ」 「へえー」と間の抜けた声を幸子があげる。年齢的には田島らと余り変わらない彼女であるが、まだまだ精神的には幼い。学生のようにきゃっきゃと盛り上がったり、不意にしんみりして女の顔を覗かせたり。どんな話題であれ、求められる以上の反応を見せるのが彼女の常であった。  田島は続けた。 「ちなみに、今なにか見える?」 「それは言わないでおこう」  大森が悪ノリをしたので、幸子は震えあがった。「変なこと言わないでくださいよ」  その反応を見た大森は面白がって、実体験の怪談話を二つほど披露した。これがなかなか恐ろしく、オープニングとしては絶好の滑り出しと言えた。田島は手ごたえを感じていた。
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