33人が本棚に入れています
本棚に追加
「さあ、お便りに参りましょう。ラジオネーム『大好き幸子さん』からのメールです。『田島さん、こんばんは。私の体験した怖い話は……』」
現場に一瞬の混乱はあったものの、以降は田島の慣れた仕切りにより、つつがなく番組は進行していった。
メールを読み上げながら、田島は考えていた。噂というものは人伝いに伝説性を帯びるものであると。
局内で、まことしやかに囁かれていた不審死に関する噂は、死神女という明確な媒体を介して大きくなっていったのだなと。
日々、交わされる様々な話の中に紛れ込んだ死神女という存在は、いつしか局内のタブーとされるグレーゾーンにまでその食指を伸ばしていたのである。
話題がちらついた途端のディレクターたちの慌てぶりを見て田島は確信していた。彼は苦笑した。
リスナーからのメールは、録音室に置かれたノートパソコン上に絶えず更新されていく。その中から田島と大森がリアルタイムで選抜をはかり、選ばれたメールが読み上げられるというシステムであった。
最初のコメントを投稿しよう!