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そういったある種、アナログなシステム上、メール紹介コーナーでは録音室内の盛況な談笑に反して、田島らの動きは忙しない。
当然、スタッフが事前に下読みし、迷惑メールや明らかに放送に堪えない内容のメールは削除するのであるが、なにぶん小さな放送局であるからそれが追い付かないこともある。
だが、田島にはその連帯感が心地よかった。
カタカタと、選んだメールを読み上げつつ次のメールをと受信箱を漁っている中、はたと田島の目が止まった。
ラジオネーム『死神女』
――そんなはずはない。
直感と眼前の現実は必ずしも一致せず、目を擦ってみても『死神女』の文字は消えなかった。
しかし、これはチャンスだ、と田島は思った。『死神女』を自称するメールが届いた。だが、これは十中八九イタズラ。
そうであるならば、読み上げてしまえばいい。真正面から『死神女』の呪縛に立ち向かい、そして翌週、何食わぬ顔でまた『ミッドナイト放送局』のパーソナリティを務め上げればいい。リスナーはリアルタイムで繰り広げられるエンターテイメントに胸躍るであろう。
そんな一連の連想が田島の脳内で組み上げられていく。
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