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彼は『死神女』の幻影を利用しようとしたのである。
「これは驚きました。続きましてラジオネーム『死神女』さん」
田島がメールを読み上げ始めた。
「ちょっと田島さん。ストップストップ」
狼狽したディレクターが制すが、田島は聞き入れようとしなかった。いいから黙っておけと言わんばかりに鼻を鳴らす。
「お、噂をすれば何とやらか」
挑戦的な田島を大森は止めようとはしない。噂の真意を知らない幸子はにべもなく同調した。怖いもの見たさというものだ。空間内に、田島の暴走とも言える行動を止められる者はもはや存在しなかった。
『我は命を刈る者。死の代行人、死神女。予言しよう、田島 シンスケの死を。怯えるがいい、泣き叫ぶいい。そして、神に祈るがいい。全てが徒労に終わり、拍動は止まる。せめてこの世にいられる残り僅かな時間を生きよ。近いうちに迎えに行く』
水を打ったような静けさがスタジオを包んでいた……。
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