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 ガシャン、と大きな音がして、急いで音がした場所へと向かう。向かう数秒間の間によぎった嫌な予感通り、その部屋は色んな引き出しがひっくり返されて物が散乱していた。 「あーあ、見事にやってくれちゃって…」  とりあえず、この事件の犯人に怪我が何もなかったことに安堵する。今朝掃除をしたばかりだというのに、散らばった物を彼女は楽しそうに物色していた。  化粧台の上のものを触るようになったから引き出しに物を詰めるようになったのに、まさか、今度は引き出しをひっくり返すようになるだなんて。  見かけによらず力持ちだし、何をするか分からないから、宇宙人みたいよ、とお母さんが笑っていたことを思い出す。 「ママー、これなあに?おてがみ?」  これ以上部屋を荒らされてはたまったもんじゃない。追いかければ楽しそうに笑って走る彼女を腕の中に捕まえれば、小さな手に、少し色褪せた封筒を握っていた。  その封筒が目に入ると、思わず目が細まる。懐かしく、甘酸っぱい気持ちが胸に広がった。 「これはね、ママの宝物なの。パパから貰った、だーいじなお手紙なの」 「パパから?パパもおてがみかくの?」 「そうよ。知尋も大きくなったら、ラブレター貰えるかもね」 「らぶれたー?おいしい?」 「んー…食べれないけど、すごくいいものだよ」 「ふぅん。ちーちゃんもママにおてがみかく!」 「わぁ嬉しい。でもその前に、ここお片付けしましょうね」  かけがえのない宝物が、毎日増えていく。知尋から手紙を受け取り、引き出しに戻す。その引き出しを閉めた瞬間、17歳の私が、ほらね、大丈夫だったでしょう?と笑った気がした。  山田△ END
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