フィボナッチの瞳

1/26
前へ
/42ページ
次へ

フィボナッチの瞳

手始めに自分の足りないところを探すのだ。そしてそれを埋め合わせる。 その埋め合わせるものか手元になかったら、埋め合わせたものか否定されたら…私が恐ろしいと思うものはそんなものが出来てしまうことだろう。 とりあえず今私に足りないのは目の大きさである。奥二重とは罪だ、なんで二重のはずなのに寝起きに一重になってしまうのか。明らかに足りないもの。 これを一増やす…ついでにキリッとさせる。先ず上瞼にさっさっさーと薄いゴールドブラウンのアイシャドウをのせる。その後で鏡を見ながら濃淡をつけて目をはっきりさせる下準備をする。 そしてここからが一つ増やす方法で瞼とまつげの境目の所、ここに厚すぎず薄すぎずで目尻の辺りまでダァ…とではなく慎重にアイライナーで黒い線を描く。ちなみに私はキリッと見せたいので目尻の少し上の方までハネ上げる。アイライナーが乾いたらピユーラーでまつ毛を上げる。幸いにも私はまつ毛が割と長く生まれたので付けまつげとかはいらなかった。 そうして次はゴールドブラウンのアイシャドウで下瞼、涙袋の辺りに影を付ける。 ここまで来ると大体完成なのだが、キメたいときは私は赤のアイシャドウを目の周りに少しのせる。 なんというか、こうすると明るくなるような、色っぽくなるような….とりあえず好みの目になる。 あとは黄色のカラーコンタクトをして片目が完成だ。 私はこれと同じことをあと一回、 そして髪を整えて、シュシュで縛って、爪塗って…エトセトラエトセトラ。 「え、ええっと。 まず僕がわからないのはなんで奥二重は朝になると一重になるのかと、あとは…」 私がアイメイクのくだりを親友に伝授していると、 やっぱり彼は私の話を一言一句聞いて、 必死にわからないことをわかろうとしていた。 「えっと瞼の重さをmとして…」 ブツブツと周りの視線にも気付かずに机に計算を始める変人。彼はそういう足りないものを埋めて隠そうとするという考えがないのだ。 彼には足りないものしかないのに。 だから私は…
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加