第3章

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 俺だけでなく幼女たちまでゾルの仲間になってしまった。  幼女たちはあれほどゾルに恐怖と嫌悪を感じていたのに何ということか。  あれから一度だけ、その感想をおそるおそる幼女たちに聞いたら、「グレさんの仲間と思えばうれしい」なんて言ってくれた。それに「何となくゾルが憎めない」とも。まあゾルは快楽を俺たちに与えてくれる存在だからな。  ゾルは言葉を持っていない。  だからゾルと会話はできない。  それでもゾルは「互いに互いの喜びを喜びとする者同士は仲間」と認識するような精神的に人間らしい生物だ。  もしかしたらゾルが幼女をさらうのは幼女を喜ばせたいからじゃないだろうか。  防衛省の目標はゾルとネストの排除だろうが、そういう知的生物を、人間にとって迷惑だからといって殺していいものなのか。  何より同じロリコンとして抵抗がある。  俺はミッションベース内の俺の部屋で幼女たちと密談をした。  ここはたぶん司令室などから監視されていない。先日初めて幼女たちがこの部屋に入ったのを司令室の佐田が知らなかったのがその証拠だ。  ゾルが幼女と喜び合えることを証明し、それを外部へ発信しよう。  そうすればゾル殺戮作戦はとりあえず中止になるかもしれない。  その後はわからない。ゾルは分裂して繁殖する生物で、放っておけばたぶん不老不死だ。ゾルとネストは増え続け、やがて世界を太陽から遮断する。  何か対策が必要だが今はそこまで考えない。  言葉を持たないゾルとどうやってコミュニケーションをとるか。  俺と幼女たちはその方法を話し合った。  ミッションベース上空のネストはそのままそこにとどまっていた。  その中には合計4体のゾルがいると考えられる。  対するこちら側の戦力は6人。今ならネスト操作力で勝てる。  しかし防衛省の判断では、それだけでゾルは退治できない。ゾルに対する高熱のプラズマ放射はホット・エンジェルの主砲クラスなら有効なのがわかった。しかしゾルを殺すためには現在わずか数秒の放射持続時間を長くする改良が必要だ。    …改良する時間は与えられなかった。
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