6947人が本棚に入れています
本棚に追加
・・・すると
「・・・何か、あったのか?」
私の左手を握る小さな手に、ギュッと力が込められた。
「あ、ああ・・・あのお皿、どうしたのかな?って・・・」
「・・・あのお皿?」
「ほら、サボテンの・・・」
昂くんは「なんだ、その事か・・・」と呟くと、何かを思い出したように笑いながら言葉を続けた。
「昨日、アオイが帰った後、父と一緒に買いに出掛けたんだ。」
「・・・えっ?」
・・・あの後って・・・夜なのに、わざわざ?
驚いて昂くんの顔を覗き込むと、彼は少しだけイジワルそうな表情を浮かべた。
「また、水浸しにされちゃたまらないからな。それに・・・」
・・・それに?
「あの鉢に似合う皿を探すの・・・けっこう苦労したんだぞ。」
昂くんは、少しだけ照れたような口調でそう言うと、私を見上げながらニッコリと笑った。
「父のセンス・・・なかなかイイでしょ?」
「あのお皿・・・城崎さんが?」
「うん。父が『絶対にコレだ!』って言い張ってさ・・・あの人が、そこまで言い張るのも珍しいんだけど。でも、喜んでたみたいだから・・・」
その言葉を聞いた瞬間・・・胸の奥の方でトクンと何かが鳴ったような気がした。
「・・・喜んでた? 私が水浸しにしちゃったのに、何で?」
「さあね・・・オレにも、よく分かんない。」
いったい、何だろう? このざわめきは・・・?
私は、いつもと違う鼓動に戸惑いながら、小さな手をギュッと握り締めた。
最初のコメントを投稿しよう!