第2章

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何か、話しかけた方がいいのかなぁ・・・ そんな事に頭を悩ませていたのも始めのうちだけで、すぐに何処かへ消えてしまった。 ・・・なぜなら ステアリングに乗せられた城崎さんの手が、思いのほかキレイな事に気づいてしまったから・・・ スーッとまっすぐ伸びた指は、軽く第10関節くらいはあるんじゃないか?と思うほど長くて、しかもスベスベな感じだ。 インドでは、左手を「不浄の手」と呼ぶらしいが、この左手でお尻を拭くなんて、もったいなくてとても出来ない。 ・・・ふふん ♪ すっかり城崎さんの手に見入ってしまった私は、あらぬ妄想を膨らませていた。 お風呂から上がった後に、何か特別なクリームでもつけているんじゃなかろうか?・・・とか。 つけ終わったあと、手に残ったクリームで顔まで行っちゃったりするのだろうか?・・・とか。 この手で触れられたら、どんな気持ちになるのだろうか?・・・とか。 ・・・それから この手に触れられているのは、いったいどんな人なのだろうか?・・・とか。 でも、そう思ったとたん、胸の奥がチクリと痛んだ。 いったい、これは・・・どういうわけか? 分からないけど・・・とりあえず、痛い。 ダメだ・・・これ以上妄想を続けたら、心身ともに危険が及ぶ領域に入ってしまう。 私は、緊急に妄想を中断すると、フーッと息を吐きながら窓の外に視線を向けた。
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