第2章

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「この辺で、いいか?」 気がつくと、そこはもう見慣れたアパートの前で・・・ 私は、「ありがとうございました」とお礼を言うと、ペコリと頭を下げて車から降りようとした。 のだけれど・・・ ふと、ずっと黙ったまま後部座席に座っている昂くんが気になって、後ろへ視線を向けた。 ・・・すると ・・・スヤスヤ・・・スヤスヤ・・・スヤスヤ・・・ 遅い時間だからだろう。 昂くんは天使のような顔をこちらへ向けて、一人夢の世界に旅立ってしまっていた。 「・・・フフフッ。」 助手席のドアを開け、一度外へ出ると・・・今度は、後部座席のドアを開けた。 間近で眺める昂くんの寝顔は、本当に天使のようで・・・ 「おやすみ、昂くん・・・」 私は、そのプックリとした頬を撫でながら、そこにチュッと唇を落とした。 ・・・その瞬間 運転席から見つめる視線に・・・運転席から私を見つめる優しい視線に・・・心臓が止まりそうになった。 「ご、ごめんなさい・・・思わず・・・」 「いや、べつに・・・」 優しかったはずの視線は、ぶつかった瞬間、色を失くし・・・また、いつもの無表情な透明に戻って行く。 ああ、いくら可愛かったとはいえ・・・何という事をしてしまったのだろう。 私と城崎さんの間には、「気恥ずかしい」という名の、何ともいたたまれない雰囲気だけが残った。 ・・・これ以上の長居は、心臓に悪い。 「そ、それでは・・・おやすみなさいッ!」 私は、城崎さんに向かってもう一度ペコリと頭を下げると、逃げるようにその場を離れた。
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