第3章

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それから数日後・・・ 珍しくインターホンの音が鳴り響いた。 連日の肩揉み生活により、すっかり耳から遠のいてしまったその音に驚いて玄関を開けると・・・ 「お久しぶりです。七瀬さん。」 そこには、久しぶりに見る佐伯さんの穏やかな笑顔があって・・・ 連日の緊張から解放された私は、一気に気が緩んでしまった。 「佐伯さん。お懐かしゅうございます。」 「そんな大袈裟な・・・たかが10日ぶりじゃないですか。」 「いいえ!私にとっては、一日千秋の日々・・・たかが10日、されど10日でございましたわ!」 「ハハハ・・・あいかわらず楽しい人だ。どうりで社長の仕事も捗る(はかどる)わけですね。」 私の魂の叫びに、佐伯さんが「爆笑」という誤った方法で返して来た事にも驚いたが・・・問題はそこではない! 「あの・・・捗るって・・・城崎さん、最近ヒマだったんじゃないんですか?」 「まさか!今、ウチの会社は、創立以来、最高と言っていいほど繁盛していますよ。」 「えっ、城崎さん、毎日早く帰って来てたし・・・てっきり、ヒマなのかと・・・」 すると、佐伯さんは、ニヤリと笑いながら 「まぁ、誰のおかげなのかは分かりませんが・・・社長は、ココのところ毎日、馬車馬のように働いて夕方までに仕事を終えると、風のように帰って行きますからね。それこそ、ピューーっていなくなる感じで・・・(笑)」 「・・・はぁ。ピューーって・・・ですか。」 「おかげで、社員は皆『早く帰れる!』って喜んでますよ。やっぱり、社長より先に帰るのは気が引けますからね。まぁ、誰のおかげなのかは分かりませんが・・・(笑)」 ・・・ふーむ。 佐伯さんの笑顔に、何やら「含み」があるのを感じるのは、私だけだろうか? そんな事を考えながら・・・久しぶりに電車に乗って家路に着いた。
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