第3章

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それにしても、城崎さんが忙しい最中だったとは・・・そんな事、思いもしなかった。 てっきり、ヒマだから早く帰って来るんだとばかり・・・ きっと、あの肩の張り方は、連日の無理な就労によるものだったのだろう。 それなのに、毎日家まで送ってもらったりして・・・何だか、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。 帰り際に聞いた佐伯さんの話を思い出しながら、お風呂の中で猛反省をする事、早40分。 いつの間にか、ふやけてしまった指先を見つめながら、また「何チャラアフター」を見逃してしまった事に気がついた。 でも、さすがに今夜は、そんなにショックではない。 なぜならば、城崎さんの「ビフォーアフター」の方が、よっぽど謎だったからだ。 メモ書きの言葉には、いつも優しさが溢れていて・・・ 夜なのに、わざわざサボテンのお皿を買いに行ってくれて・・・ どんなに疲れていても、必ず私を家まで送り届けてくれる。 それなのに・・・私に笑顔を向けてくれないのは、どうしてなんだろう? 彼の優しい笑顔を見たのは、たった一度・・・昂くんにキスをした、あの時だけ・・・ でも、私と目が合った瞬間・・・その笑顔は、跡形もなく消えてしまった。
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