第3章

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『キミは、きっといいお嫁さんになると思うよ。僕には、合わないけど・・・』 初めて出来た彼氏のため、料理教室に通ったり、オシャレに気を遣ったり、自分なりに一生懸命やったつもりだったけど・・・彼は、ひと言「重い」と言い残して私から離れて行った。 私が家政婦になったのは、あの時とった杵柄(きねづか)を無駄にしちゃいけないと・・・こんな事に負けちゃいけないと・・・そう思ったから。 あの日から、もう誰かを好きになんてならないと心に決めていたのに・・・ あの日から、二次元でも三次元でもなく、一人妄想の世界で幸せに生きて行こうと心に誓ったのに・・・ どうして、またこんな事を考えてしまうのだろう? ダメだ!ダメだ! 恋なんかしたって・・・どうせ傷つくだけ。 そして、今度傷ついた時には、もっともっとその傷口は広がって・・・ それに耐えられる自信なんか微塵もないのに・・・また性懲りもなく、誰かに寄り添いたいなどという願望に目覚めてしまう。 女って・・・本当にバカだ。 そう・・・城崎さんは、私の妄想の中だけで生き続けてくれれば、それでいい。 とにかく、人として謝るべきところは謝って・・・ そして今後も、私は、依頼人から信頼されるような担当者になるべく、日々邁進して行けばいいのだ。 よし!こうなったら、今日からしばらくの間・・・あのキレイな手は封印だ! もったいないけど・・・今、この時をもって封印する! そう心に決めて・・・ 私は、おトイレの照明磨きに、今日イチの頑張りを発揮しよう!と雑巾を握った。
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