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「そんなわけで・・・申し訳ありませんが、今日は帰らせていただきます。」
「行く宛はあるのか?」
行く宛? そんなものあるわけがない。
「いいえ・・・でも、いったん帰らないと・・・」
早く駅に向かわないと、電車に間に合わなくなってしまう。
私は、ペコリと頭を下げると、急いで靴を履いて玄関のドアを開けた。
・・・その時。
「ちょっと、待て!」
「・・・はい?」
掴まれた腕を勢いよく引っ張られた私は・・・そのまま城崎さんの胸に、スッポリと納まってしまった。
「ちょ・・・ちょっと・・・」
「宛もないのに、いったいどこへ行くつもりだ?」
「とりあえず、帰ってからゆっくり考えようかと・・・っていうか、コレ・・・」
そう言って、慌てて城崎さんから離れると、彼は呆れたようにため息を吐きながら、とんでもない事を言い出した。
「だったら・・・ココに住めばいいだろ?」
「・・・は?」
「部屋も余ってる事だし、何の問題もない。」
「あの・・・おっしゃっている事が、よく・・・」
そのまま城崎さんに引きずられるように・・・また私は、リビングに連れ戻されてしまった。
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