第3章

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***** お風呂から出た私は、持って来た荷物を片づけ始めた。 城崎さんから与えられた部屋は、いわゆるゲストルームで・・・ ベッドの他には、クローゼットと小さなテーブルが置いてあるだけの閑散とした部屋だった。 その空のクローゼットを開けて、ワサワサと勢いよく洋服を詰め込む。 後は、化粧品やら何やらの日用品を取り出して棚に並べるだけで、あっという間に引っ越しは終わった。 「さて・・・始めるか。」 私は、寝間着代わりにしているノースリーブの膝丈ワンピースに着替えると、ベッドに横になりながら例のファイルを開いた。 『カレー、ごちそうさま。とても、美味しかったです。昂も喜んでいましたよ。今日も暑くなりそうです。熱中症にならないように気をつけて下さいね。    城崎』 思うに・・・この文面と実際の城崎氏の間には、万里の長城に匹敵するほどの隔たりがある。 特に、ココだ。 『熱中症にならないように気をつけて下さいね。』 この、最後の「ね。」の部分。 フレンドリーな雰囲気を醸し出しつつ、すんなりとこちらの懐(ふところ)に入り込んで来るこの一文字が・・・何とも嘘くさい事か。
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