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「ホントに、そうだよなあ」
伏し目がちだった親父が、独り言のように口を開いた。
体格の良い彼も、背を丸めているからかいつもより小さく見える。
「小さいころからお婆ちゃんにはイタズラばっかり仕掛けられて迷惑してたが……この年になるまで、ずっとやり続けたんだもんな。
おかしな言い方だが、筋は通ってるよ」
「もうされないと思うと、寂しくもあるわね」
母さんが棺を見やって、わずかな沈黙が訪れた。
すると突然、場面を盛りたてるように軽快な電子音が鳴り響く。
「……あ、メール」
脇に置きっぱなしにしていた自分のスマホを手に取る。
タップして送信者を見たとき、俺は言葉を失った。
「どうしたの、お兄ちゃん?」
口を開けっぱなしにして固まっている俺の後ろから、妹がメールを盗み見る。
そして、悲鳴に近い声を上げた。
「お、お、お……」
「ミホ? どうした?」
「おばあちゃんから……メール来てるっ!」
送信者は、そこで横たわっているはずの婆ちゃんだった。
去年買ったばかりの彼女のスマホから、確かにメールが届いている。
「何言ってるのよ……」
不安に顔を歪めた母も、その画面を見て青ざめた。
送信者だけでなく、その内容にも衝撃を受けたのだろう。
頭の中で、俺はその文面を反芻した。
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