第1章

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色を失った父が、茫然とした口調で言う。 「またイタズラか……?」 「お父さん、しっかりしてよ! どうやって死んでからもイタズラ出来るって言うの!」 「落ちつけよミホ」 たしなめてはみたものの、俺も動揺していた。 地獄という文字が、強烈に脳に響く。 本当に彼女の仕業なら、七十九年のイタズラ人生を締めるにふさわしい出し物だ。 「お義母様も不謹慎よね、いくらイタズラにしてももう少しやりようが……」 母が早口でまくし立てる。 自分に言い聞かせているかのようだ。 父はせわしなく視線を動かしながら、呻くように言った。 「ミホの言う通りだ。これは一体、どうやって出来たんだ」 幽霊、という一語が皆の脳裏をかすめている。 言葉にしなくても、俺には分かった。 「……ばあちゃんの友達に頼んだとか、どうかな」 何気なく言うと、母は縋るように目を輝かせた。 「そうね、きっとそうよ。ほら亡くなる前に家に来てた沢田さん。あの方、お婆ちゃんとは仲が良いから……」 しかし、ミホは固い表情のまま否定する。 「どうやって? お婆ちゃんのスマホは、さっきからずっと棺の中でしょ。死に装束の胸元に挿してあるの、みんな見たじゃない」 その通りだった。 去年購入したもので、よく俺やミホが使い方を教えていた。 暇を見てはいじくりながら、最近では簡単な操作を一通りこなせるようになっていたのだ。 父が項垂れながら、首もとをしきりに揉んでいる。 「あのな、実は…… お婆ちゃんのスマホ、電源が入っとらん。 もう必要もないと思って……昨日、俺が……」
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