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息の詰まるような沈黙が訪れた。
皆が脳をフル回転させているのが、手に取るように分かる。
電源が入っていないスマホから、手を触れずにメールを送る。
そんなことが、はたして出来るのだろうか。
出来る者がいるとして、それは生身の人間なのか。
「……あ、そうだ」
俺は顔を上げた。
すぐに自分のスマホをタップし、送信者のメールアドレスを表示させる。
イタズラ好きの婆ちゃんなら、俺のスマホをこっそりと触って、登録してある自身のアドレスを他のものにすることくらい考えつきそうだからだ。
「どう?」
心なしか、皆の目が期待に満ちている。
突破口が目前に現れたからだろう。
しかし。
「……本物、なのね……」
液晶画面を覗き込んでいた母親が、絶望的な声色で言った。
昔から、オカルトやホラー物は苦手な人だ。
そこを逆手に取られて、たびたび婆ちゃんに怖がらせられていたっけ。
目の前に表示された婆ちゃんのメールアドレスに、心底おびえているようだ。
「おい雄太」
いまだ首に手を当てつつ、目に光の戻った父が話しかけた。
「つまり、その棺の中のスマホからお前に送られたことは間違いないんだな?」
「うん」
「お父さんはあまり詳しくないが、タイマー予約みたいなことは出来んのか?
ほら、母さんがいつもテレビドラマを録ったりしてるだろ。アレみたいなことはスマホでは出来んのか?」
「……あ!」
盲点だった。
使う機会などさっぱりなかったから忘れていたけれど、携帯電話の時代にはあった機能だ。
スマホにはない機能だがタイマーメールのアプリを使えば可能らしく、犯罪のアリバイ作りに利用されたこともあると聞いたことがある。
「でも、おばあちゃんのスマホには電源が――」
言いかけたミホを言葉で制す。
「婆ちゃんのやつ取ってきてくれ。いいから」
「だって……んもう、分かったよ」
文句を言いながらも、すぐにミホが婆ちゃんの懐からスマホを取り出した。
「ごめんねおばあちゃん、ちょっと借りるね」
そして俺に手渡した。
受け取り、すぐに起動させる。
「どれがそういうアプリかって分かるの?」
「まーな。確か……あった、これだ」
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