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勝ちゃんとは、近藤の名前、勝五郎からきている。
襖が開くと、近藤よりは若いが白茜や宗次郎に比べると年上の青年が立っていた。
「あ…わ、私は白茜です…。よろしくお願いします…。」
怖さから白茜は両目を固く瞑る。
すると、髪を触られる感触がした。
「…え?」
「そんなびびんびゃねーよ。お前はこの髪が嫌らしいが、俺たちはそれを笑うほど落ちぶれちゃいねーよ。」
青年はじっとまっすぐ白茜の目をみてきた。
なぜだか他の人が言うよりも信じられて、なにより体が軽くなった。
「…ありがとうございます。」
照れつつも少し赤くなった顔で目を細める。
青年も少し赤くなったようだった。
「あの、あなたのお名前はなんていうんですか?」
「あ?あぁ。俺は土方ってゆーんだ。」
土方さん…。
優しい人なんだな。
「土方さんはここにあんまり来ないんですか?」
「あーそうだな。俺は今薬売りをしてて、他の道場なんかを巡ってるんだ。ここへは近くを寄ったときに立ち寄るくらいだな。」
「薬売り…大変なんですね。でも羨ましい。それっていろんなところを歩いて回ってるってことですよね。私もいろんなところを見てみたい。」
土方はそんな白茜をみて、
「なんなら、俺と一緒に旅するか?…なんてな」
半笑いでいってくれたが、白茜は外へ出ることは時間が限られてる。
旅をするのにこれほどめんどくさいことはない。
「いえ。諦めます。たしかに、この家からみえる景色もきれいですもんね。私はこの風景で大丈夫です。」
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