第1章

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教師よりも嫌なものは休み時間だった。休み時間になると皆が話し出す。 昨日はお父さんと遊んだ。お母さんの料理が美味かった。お兄ちゃんに勉強を見てもらった。 など。耳を塞ぎたくなるような会話がすごく嫌だった。また、皆がうらやましかった。自分は帰ったら部屋に篭り勉強をし夕飯になったら苦手な祖母の料理を食べて、終わったらまた部屋に戻り勉強をしいつのまにか寝ている。思えば思うほど哀しくなる。自分はこのままでいたらいずれ壊れる。進はそう強く思っている。日が経つほどその思いは強くなってくる。どこの場所にいようと思いがまぎれることはない。 放課後になり、進はいつも通り帰っていく。その帰り道に人がいたのだ今までこの時間に人がいたことはない。進は物珍しそうな顔つきで遠くからしばらく見ていた。なにをしているのかよくわからないため近づいてみると。男性だった。白髪の老人で背は低く猫背で椅子に座って絵を描いていた。進は後ろから絵を見てみた。だがよくわからない絵だった。不気味で見たことのない絵。進は老人にこれはなんの絵かと尋ねた。すると老人は 「ここの風景を描いていたのだよ」 細い声で言った。 進は驚いた。なんせここの風景とはまったく違うからだ。原形もない。進は眉をしかめた。この老人は俺をからかっているのか。と思えるほど違う絵だった。そんな進の表情を見た老人がこう言った。 「絵は描く者の気持ちや見方によって違う。わしにはここの風景がこういう風に見えたのだよ」 そういうとまた絵を描き始めた。進は面白い人だなと思っていた。でも、すこし興味を持った。
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