残星

9/15
246人が本棚に入れています
本棚に追加
/1672ページ
「貴様、その頭蓋骨はなんだ?それが貴様を狂わせた原因か?」 顔をしかめたリュウシンの視線に気がつき、戦士は怒ったように立ち上がる。 「狂ってなどおらぬ!子を失って、嘆かぬ親がいると思うか!!!」 その一言ですべてがつながった。目の前の戦士は戦場で子を亡くし、それからすべてが狂いだしたのだと。 「あれは二年ほど前、我らの部隊が北の貴族どもと大戦をしている最中のことであった。我の目の前で我が子は獣とともにその首を切り落とされた!息子を斬ったのはまだ年若い雑兵であった。 だが、乱戦のただ中でその姿を見失い、援軍を欲した他の部隊を助けるために我は泣く泣く戦場を後にした!それから我は北の戦場で戦いながら仇を探し続けた。 あの時、息子を斬った剣だけは覚えている。それを持つものを探し、殺すのが我が宿願!たとえこの身が滅びようとも、我が息子の無念を晴らすまでは死ぬことはない!!」 一気にまくし立て、激しい息遣いを見せる戦士にリュウシンは顔を向けた。今度は戦士が息を飲む番であった。 「そうか、それで分かったよ。俺からもアンタに聞かせてやろう、俺が北の地ではじめて戦士を倒したとき、近くにいたその親らしき戦士が絶叫していた。俺は怖くなり、その場を逃げ出した。 だが、戦い続ける以外に俺に道はなかった。俺の仲間も貴様らに殺されたんだ。俺の故郷も貴様の仲間によって滅ぼされた。もう、どうしようもない。ここで決着をつけよう、貴様が探していた仇は俺だ。この剣に見覚えがあるんだろう?」 リュウシンは背後に隠していた、もう一本の剣を引き抜いた。二刀を構えるのはこれが初めてだったが、不思議と落ち着いている。なぜか、はじめて父から剣を学び始めた時のことが思い出された。 「おおおお……、お前かァアアアアアアア!!!お前がァ!お前がムゲイをォオオオオオオオオ!!!!」 主の絶叫に獣も湧き立ち、リュウシン目がけて襲い繰る。しかし、動くことなくその来襲を待つ。構えた二刀が、別々の生き物のようにしなり襲いかかる。
/1672ページ

最初のコメントを投稿しよう!