第1章

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「普通、上司と飲んでたら、友達の方断るだろ?」 「本当にすみません!そう友達にも伝えたんですけど、海外にワーホリで行く事になった友達の送迎会も兼ねてて、2年会えなくなるんで顔出してやりたいんです」 吉田が申し訳なさそうに言ってるのに、それでも『行くな、付き合え』なんて非情な事が言えるワケがない。 「2年会えなくなるなら行かせてあげた方がいいんじゃないですか?」 綾野は顔が満面の笑みで不気味。 吉田がいなくなったら綾野と二人きりになる……。 それはこの間の事もあるし 避けたかった。 しかし、吉田を引き止める事も出来ずに、結局は行かせる事になる。 「飲み過ぎて二日酔いで出勤したら減給だからな」 「大丈夫っす!ちゃんと自制するんで! 本当にすみません。お疲れ様でした。店長ご馳走さまです!」 吉田はテーブルに置いていたスマホと、床に置いてあった鞄を勢いよく掴んで、何度も頭を下げて去って行った。 「…………」 「…………」 「二人きりになっちゃいましたね。クリスマスのイブに」 綾野が嬉しそうに顔を赤く染める。 「そうだな。さっさと食って帰るか」 素っ気なく言うと、綾野は明らかに眉を八の字にしてションボリした。 そんな顔するなよ。 「店長は私と二人きりはイヤですか?」 「イヤじゃないけど綾野に喰われそうでコワイ」 「辞めてください、そうゆう言い方! 私、肉食じゃないですよ。好きな人には積極的にいきますけど」 「オレを襲ったじゃん」 「何言ってんですか。襲ったのは店長じゃないですかぁ!」 「人聞きの悪い。もうこの話はよそう」 「店長、ミユキさんと終わったみたいですね。ミユキさんに聞きました」 「…………」 そんな風に人から又聞きで、 ミユキがオレとの関係が終わったと告げてる事を聞くなんて その事実がやたら胸に突き刺さる。 みんなに公言してるのか、ミユキは。 吉田もオレがイブにミユキと過ごさない事を何故だか聞いてこなかった。 きっと、もうミユキと終わった事を知ってるんだな。 終わったように見えるけど まだ分からない。 オレはミユキのお腹の子に 望みを託しているんだ。 オレの子であれば ミユキとの縁は 一生切れないから。
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