第1章

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中原誠也。享年22歳。 事件から1週間経った今日は俺の友達、誠也の葬式だった。 階段からの転落事故だった。 俺の目の前で頭を強く打って死んだ。 事件性が無いか確認の為ということで警察からの聴取を受けたが、事故の原因は酒に酔った拍子に階段を踏み外し転落したと判明したことで事情聴取は終わった。 葬儀は家族だけで執り行われていた。 幼馴染であるということと、偶々俺が事故の現場にいたということで葬式の連絡が来た。 葬儀が終わって、やつれた顔をした誠也の母さんに涙ながらにお礼を言われた。 誠也の母さんは、警察からの聴取を受けていた1週間の間に大学の除籍届けや携帯電話の解約をはじめ、警察とのやりとりだけじゃなく身辺整理にも追われていたらしい。 ただ俺は誠也の死に対して純粋に悲しいと思うより人が死んだ瞬間を目にしたショックの方が心の割合を占めていたのかもしれない。友達が死んだっていうのに、涙は流れなかった。 夕方になって家に着いて、スーツを脱ぐとポケットから清め塩が落ちてきた。 既に部屋に入ってしまったし、そんなの迷信じみたことを信じない俺は、それをテーブルの上に置いた。 それからワイシャツのポケットから携帯電話を出す。 もちろん式の間は電源を切っていたから、電源を入れメールと着信履歴をチェックする。 着信履歴は無かったし、メルマガとFacebookのお知らせ以外新しいメールは入っていなかった。 その日一日何もすることが無かった俺はカップめんを夕食にして早く寝た。 事故のことを忘れたかったのもあったのかもな。
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