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清水くんが指さすと、声をかけた男子が携帯をのぞきこんだ。
ちょっと、人のメール見るなんて何考えているのあいつ。
教室に入ろうとしたのに足が前に出ない。なんでだろう、身体が思うように動かせない。生臭いにおいがだんだん強くなる。このにおい、あたし? そんなはずない、ちゃんとお風呂入ってるし……あれ、いつ? あたしいつ家に帰った?
「マジかこれ。塚本からのメール?」
「うそっ」
携帯をのぞいた男子が叫び、近くにいた女子も騒ぎだす。なによ、あたしからのメールがなんだっていうの? あいつら、なんかムカつく。人のメール勝手に見るなんてサイテー。
少し離れた廊下のすみで、女子がふたりしゃべっていた。
「ねぇ聞いた? 塚本さんの事故、あれ自分で円井さん呼び出したらしいよ」
「なんで」
「そりゃ、円井さんに別れてっていうためじゃない? あの人、自分が清水くんとお似合いだって本気で思ってたみたいだし」
「それマジ? すっごい自信満々だったけど本気でそう思ってたんなら痛いじゃん」
話し声はあたしにまで余裕で聞こえた。本人ここにいるってのに、ずいぶん堂々と言ってくれるじゃない。しょうがないわよ、あたしの方が可愛いんだから。
町はずれの池に円井を呼び出したのは清水くんのアドレスを聞こうとしただけ。だってあたしは知らない彼のアドレスを知ってたんだもの。それを教えてもらおうとしただけじゃない。
あの子とのやりとりがよみがえる。
『でも、本人に無断でアドレスを教えるなんてできないよ』
『いいじゃない。あたしから頼んだっていうから、ね』
『清水くん、そういうこと嫌がるから』
知ったようなこと言うから腹が立った。まるで、清水くんの彼女は自分だとしでも言いたげな様子で。そんなはずないじゃない、あたしの方がどう見ても美人なのに。
それで、つい円井ともみ合いになって、ふたりして池に……。
「あ……」
池に落ちて焦って岸に戻ろうとしてもがいて、それから。それから?
「うそだろ! なんで死んだやつからメールなんて来るんだ? なんで俺に」
清水くんが叫んでる。教室内は軽くパニックになっていた。
あたしが、死んだなんてなに言ってるの。そんなこと……。
「なに騒いでんの、このクラス」
「さぁ? それよりさ、塚本さんの携帯電話見つからないんでしょ」
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