第1章

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 噂話をしていた女子の声がまだ聞こえる。あたしが死んだなんてうそだ、そう言ってこの教室に入ってやりたいのに全然動けない。足元がすごく不安定になってふらつく。うまく立っているのかどうかも怪しくなってきた。ドアに添えていた手がずる、と滑る。 「あたしは、ココニ……イ、ル」    ぐしゃ。 と、湿った音がして教室にいた全員が一斉に振り返った。  廊下から入り口にかけて、べったりと泥が広がっている。近くにいた女子生徒がおそるおそる近づく。 「この携帯、もしかして」  泥の中に半ば埋もれるように携帯電話が落ちていた。ピンク色のカバーのついた携帯電話はぶるりとも震えることはなかった。
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