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この世界の異空間の何処かに存在する、青い薔薇の咲き乱れる奇妙な館。
青薔薇の園(その)
青薔薇の館(やかた)
青薔薇館
人形の館……
呼び名は様々だ。そこは、死者の魂を宿した生き人形達が暮らす、仮初(かりそ)めの楽園だった。 そして――人形を追う死神たちもまた、ここにやって来るのだ。
四方をぐるりと薔薇の装飾の施された黒い鉄柵で囲われたかなりの敷地。正面に大きな鉄柵の門が聳(そび)えている。どんな仕掛けになっているのか、人形達が近寄ると自動ドアのように勝手に開く。
門を潜ると、中央の一本の道を挟むように一面に青薔薇の庭園が広がっている。
中央の道を真っ直ぐ進むと、道の左右にやはり薔薇の模様を施した噴水が見える。噴水の周りには所々に薔薇の模様を施したベンチ。それをL字に囲む低い薔薇の生け垣を越えて、やがて館が見えて来る。
ヨーロッパにありそうな城やカントリーハウス程の大きな洋館で、アールヌーボー調のアンティークな建物だった。
道の終わりにあるのは、これまた薔薇の装飾が施された分厚い金属製の正面扉。
そこを開くと吹き抜けの玄関ホール。
左右に二階への階段。正面奥に食堂ホールへと続く扉がある。
食堂ホールは舞踏会とか開けそうな広さ。ここも吹き抜けで、どんな仕掛けか、星空とかが綺麗に見える。ちなみに、外の天候には左右されるとかされないとか。
ホールの左右にアーチ状の回廊。それぞれ東棟、西棟に繋がっている。
東側の二階以降は、人形たちの居住区。広い豪華な部屋を一人で使える。部屋の作りはどれも一緒で、テーマカラーが違う。
『白薔薇の間』や『赤薔薇の間』色々な薔薇の色に分けられているのだ。
対して西側の二階以降は、巨大なプールだの風呂だの、だだっ広い書斎だのがある。
但し、三階の外れは人形師のアトリエ兼自室となっており、立ち入り禁止。
そんな館の主(あるじ)の人形師は気紛れ者で、争い事は嫌い。
ふらりと出掛けては、人形を作ったり直したり。時折何が気に入らないのか、物を投げるように壊す時もあるらしい。
ここには、彼と彼の作った人形に魂を寄せる者たちの、楽園なのだ――
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