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優人の黒い笑みを下から見上げる志狼の顔がびくっとなる。
――ヤバい。優兄ちゃんのお仕置きがクル。
優人の『お仕置き』はかなり地味だが、やる者にとってはかなり大変な事なのだ。――『食堂』や『室内プール』『右手回廊』『玄関ホール』等……を『一人で掃除する事』。いつもなら、使用人が何人かでやっている所、をだ。
その『お仕置き』を志狼に下す優人。
「ここ――一階の右手回廊を掃除してくださいね?」
「なんでっ! 俺がっ!」
「そこの花瓶割ったでしょう。片すついでですよ」
「……っ!」
「それとも、一晩お説教コース食らいたいですか?」
「……わかったよー」
しょぼんとした顔を見て、優人が志狼の足を下ろす。
「ああ、私は、ドアと生け垣を直します。……サボるとわかりますので、脱走しないでくださいね」
掃除道具を取りに行く志狼の背中に、優人の優しいが有無を言わせない声がかかった。
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