執着

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彼女と別れた。不倫だった。 結婚しているのは、俺の方 「私は、あなたと別れたくないわっ」 先日、妻が妊娠していることが分かった。 だから、不倫相手だった彼女に 別れ話を始めたら、泣きつかれて、すがられた 彼女とは、妻と付き合う前に付き合っていたことがある。 それが、俺が結婚してから 不倫という形で寄りを戻した。 昔、付き合っていたときから、彼女は束縛をしたがる女だった。 それは不倫になっても変わらず 俺に妻がいることが分かっていても、彼女は嫉妬深く尽くす女だった。 それを重いと思い始めていたのも、最近。 これ以上は、耐えられなかったから 身勝手なのは分かっていて、俺は泣きじゃくる彼女を突き放した。 「私は、あなたから絶対に離れない」 そう捨て台詞を聞いて彼女とは別れた。 それが、二週間前。 仕事から帰ると玄関のドアのぶが茶色く汚れていた。 だけど、アパートの電灯が切れかかっていて、 よく見えなかったので、俺は気にせず、玄関のドアを開けて帰宅した 家に帰ると、妻が夕食を用意して待っていてくれた。 今日の夕食は、ハンバーグと野菜の付け合わせだった。 妻は先に食べたらしく、俺には焼きたてのものを出してくれた。 妻は料理が上手だったので、楽しみにしながら肉を口に運んだ。 「あれ? なんか、いつもと味が違うね」 食べた瞬間、強烈なスパイスの香りが口に広がった。 ちょっと、オリジナル感が強いなんてもんじゃない。 これは、やりすぎだ。 「今日、私が買い物に行っていた間に お義母さんが作っていってくれたみたいなの」 俺は一人暮らしを始めた時から、ずっとこのアパートに住んでいる。 それこそ、妻と結婚する、ずっとずっと前から。 そんなわけで、一人暮らしだったのと 結婚してからは共働きな俺たちを心配して お袋は昔から度々、こうやって、夕食を作りにきてくれる。 勿論、お袋には合鍵を渡していた。 「ああ。お袋か」 それにしても、お袋、料理の腕落ちたなー。 スパイス使いすぎ。 「お母さんにお礼言っといてね」 「まあ、後でな」 礼儀正しい妻は、俺にそう念を押して、赤ん坊のいるお腹をさすった。
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