執着

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妻はしつこくお袋へのお礼について言っていたけれど。 仕事に疲れていた俺はそれを後回しにした。 そして、ようやく、お袋にお礼を言おと思って動いたのは 風呂からも上がって、時刻が22時を回ったころ。 いつも通り晩酌はせず、俺は風呂上がりの酒を飲む 妻が持ってきた缶ビールに適当に口をつけた。 反対の手には携帯電話を握る。 「ああ。お袋?」 そういえば、昔っからこの習慣は 変わらないなと思った。 晩酌はせず、寝る前のこの時間にビールを飲む習慣。 「どうしたの? こんな夜遅くに」 電話に越しに、お袋の声を聞いていた時 ビール缶の側面に、透明のラベルが貼ってあることに気がついた。 書かれていた文字は、 『あなたと私は一心同体』 「今日中に、お礼を言っておこうと思って」 そういえば、合鍵といえば。 彼女と最初に付き合った時に渡した、ここの合鍵を まだ返してもらっていない なんで、こんなタイミングで思い出すんだ。 「お礼? なんの?」 「…………夕食、作りにきてくれただろ?」 「作りにいってないわよ」 そのとき、お袋の声よりも、メールの着信音が やけに大きく聞こえた気がした。 メールを見ると 元カノから。 『美味しかった?  ハンバーグ  』 メールには 片方、手首から先がない彼女の写真が添付されていた。
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