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少しだけ、わかった気がした。藤次郎が部屋に来る日に、掃除をしようと思ってしまう理由。
でも、わかりたくなかった。だって、どう足掻いたって仕方のない相手。
ライバルは、手に入らないものは何も無い社長令嬢。
それに引き換えあたしは……――
財力なんて微塵も無い、ただの一般ピープル。可愛げもなければ愛想もないし、喜怒哀楽だってハッキリしない。
あなたの魅力は?
そう訊かれて、自信を持って答えられる箇所なんて何一つ持ち合わせてはいない。
百人が百人、社長令嬢を選ぶに決まってる。
それがこんなにも惨めだなんて。
藤次郎は、二十二日を空けとけって言ったけど、二十一日の夜の予定は訊かれていない。
三十五歳になる瞬間は、眞由美さんと迎えるのだろうか。
「ねーえ?由宇」
「んー?」
「来週末ね、合コンがあるんだけど。商社マンでイケメン揃い!ぜーったい、由宇のタイプの人がいるよー……って、興味ないか。やめとく?」
訊いておきながら自己完結させようとするのは、数少ない真里の欠点ではないかと思う。
「行くよ」
「わあ!珍しい」
わざとらしく手を叩いてみせる目の前のこの女性が、やはりたまに腹立たしくなる。
そんなに驚くほど、あたしは付き合いが悪かっただろうか。
確かに、前の彼氏と別れて一年近く、誰かと新しく付き合おうとは思えなかった。それはずっと、彼氏のような、もしかしたらそれ以上の存在がいつもあたしの傍にいたからで…他の誰かを求める必要もなかったから。
でも、それももうオシマイ。
ずっと、心のどこかで引っ掛かっていたものの正体もわかったし。かと言って、それをどうこうできる術もないし。
きっと、潮時。
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