第壱章

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時は遡って三日前… 【大学】 いつものように碧羽は昼食を中庭で一人で食べていた。 「ボッチもデジャブか」 碧羽はふと呟いた。 「先輩のボッチ弁当は絵になりますね。どうして先輩はいつも一人なんですか?ふふっ」 背後から聞き慣れた声がした。 この何とも言えない煽りをしてくる後輩は一人しかいない。 「……。やっぱり景か。今日はどうしたんだ?」 碧羽は少し呆れたような表情で景の方へ振り返る。 景はニヤリと笑い 「暇だったので先輩を誂(からか)いに来ました。お邪魔したようなら謝りますよ」 「悪びれてるようにも見えないし、反省の気持ちは一切無いだろ。それで本当の用事は何なんだ?」 碧羽はそう言って真剣な眼差しで景を見る。 「そんなに怖い顔しないで下さいよ。あやたかからの伝言です」 景は声のトーンを落として碧羽に告げた。 最近あやたかは景を情報伝達として使っている。お陰さまで携帯電話への連絡は少なくなっている。 景への負担は計り知れないが、そこは罰ということで置いておこう。 「今夜9時にあやたかの家に来てください」 小声でそう言ってから…… 「たまにはサークルに来てくださいね」 そう言って景は行ってしまった。 碧羽は去っていく景の後ろ姿を眺めた後、残っている弁当へ視線を移した。 「仕事か、あのときに比べればどんな仕事も楽に思えるな」 そう言ってから残りの弁当を食べた。
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