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メグミは放課後、バスケットコートの観客席に座っていた。
この日は他校の親善試合の為、部員は遠征に出ている。
広いコート
見慣れた丸い球体
思い出すのは、背中に羽根が生えたように走り回る自分の姿。
そして、同時に疼き痛む肩。
「メグミ・・。」
後ろから声をかけてきたのは、トーマスだった。
同じ留学先に行った同級生だ。
「彼女、残念だったな。」
「別に約束してたわけじゃないから。」
「でも、希望はもってたんだろ?」
「トーマス、やめてくれ。」
ふぅ、と溜息をつき、トーマスがこれ以上話すのを止めた。
「私はこの街で全て失った。希望なんて、ない。」
「いいのか?それで。」
いいのか。
そう聞かれれば、イエスとは言い難い。
しかし、他にどうする事も出来なかった。
今は喪失感から、何もやる気を出すことは出来ない。
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