第1章・花の妖精

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バッ、と小花が散った。 5月の外苑の木々は緑に萌えているというのに、こんな時期に、散り桜?   私は一瞬、夢のような光景に見とれてしまった。  「コラーッ! 1年! ゴミ投げんなーっ!」   竹箒をかざして、唯ちゃんが校舎を見上げて叫んだ。   どうやら小花が散ったのではなく、ビリビリに破かれた紙切れが校舎から投げられたようだった。   ひらひらと校舎の2階から舞ってきたその小片に、私は目を奪われてしまった。 「だって、全部赤点だったんですー」   2階のベランダから、ショートカットの女の子が思いっきり笑って身を乗りだし、そしてひょいと姿を消した。
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