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夏の風物詩、肝試し。
皆さんに警告いたします。どうか、この夏からは軽い気持ちで肝試しはお止めください。
霊界の扉に足を踏み入れた時、戻れる保証はどこにもありません。
申し遅れました。私の名前は羽村瑞希。霊能者なんて如何わしい仕事をやってます。
仕事柄、先ほどお話ししたような霊に纏わる四方山話をたくさん知っています。
私自身の体験もありますし、そうでない話も。
今日は、そんな話の中からひとつ、気弱な医大生のお話しをしましょう。
その大学生は、国立の医大に通っている二年生。
幼少の頃から気弱で、いじめられっ子でした。
そんな経験から友人と距離を置き、勉強に励んだ結果、難関と言われる国立の医大に入学を果たしました。
彼の家はそれほど裕福なわけでもなく、親の援助で学費は賄えておりましたが、医者や弁護士などの親を持つ他の同級生たちとはどうしても生活のレベルに差が出てしまいます。
元々が気が弱くていじめられっ子だった彼は、ここでも同じようにいじめられっ子となってしまいました。
そんな夏のある日、夏期休暇に入った彼に、同級生たちが旅行の話をもちかけてきました。
海外旅行や高級避暑地での贅沢な旅行であれば断るところでしたが、今回はお金のかからない田舎の山荘で過ごすアウトドアの山遊び。彼もそれなら参加できそうでしたし、理由もなく断ることもできず彼は旅行に参加しました。
しかし、この旅行には同級生たちの悪意が含まれていました。
その山荘の近くに霊が出ると言われる廃病院があったのです。
あらかじめ仕掛けをした廃病院で肝試しを行い、彼を怖がらせて、その様子を楽しもうという計画でした。
そんなことを知らない彼は、同級生たちとともに山荘に泊まり、その夜、肝試しに参加させられることになりました。
策略通り、彼は偽物の幽霊に脅かされ、廃病院の一室に閉じ込められてしまいました。
そこは霊安室。遊び半分で居てはならない場所です。
怖がる彼の声を聞きながら、同級生たちは扉の外で笑っていました。
そろそろ種明かしをするかとドアノブに手をかけたとき、霊安室の中から悲鳴があがりました。
ただ事ならぬ声に同級生たちがドアを開けたとき、彼の姿はどこにもありませんでした。
その後、警察が呼ばれ、大規模な捜索が行われましたが、彼の姿が見つかることは二度とありませんでした。
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