第1章

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 何処から知ったのか、十年前に付き合っていた彼女から、携帯にメールが届いた。  タイトルは彼女の名前。副題は、『幸せですか?』。  その副題で、当時の自分を思い出す。  若かった……なんて言い訳をしたくないが、浮気はしまくったし、暴力は振るったし、ギャンブルで作った借金返済の為に、彼女の貯金を食い潰し、そして別れた。  最低だと思う。ある日、朝起きたら彼女が居なくなっていて、しかし、それから俺は真面目になり、今は愛する妻に小学生の娘が居る。  だから、副題の答えは、『幸せだ』になるのだろう。  俺は、会って謝りたいと強く感じながらメールを開き、下へと画面をスクロールする。  当時の恨み事が長く書かれているのかと思いきや、そこに書かれていたのは、たったの二行……   『そろそろ、発症したでしょうか?』   『私は、HIVです』
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