兆し

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 娘と二人、真っ暗な病院の受付でただ黙り込んだまま座っていた。  電灯が薄っすらとしかついて居なかった為、非常灯がやけに眩しく感じていた。  ふと顔をあげると、全身の毛が逆立つような怒りと恐怖の入り混じった感情が込み上げた。  ロビーからは、自動ドアが近いため外の様子が窺えた。  国道沿いの病院は車が通る度照らされ、時折その光がロビーを照らす程だった。  そして。 「ウソ……………だろ……………」  そう呟いたが、言い終わったとすぐさま自身の口を塞いだ。娘に余計な事は知らせたくないし巻き込ませたくはない。  自動ドアの向こう側、国道沿いでジッと立ち尽くしていたアノ女が立って居た。
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