兆し

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 立ち上がり追いかけようと思ったが、娘が居た為下手に動く事が出来ない。 「どうしたの?お父さん」  そう心配そうに、娘は私に声をかけて来たが”何でもない”と声を返すと、再び椅子に座る。  再びあの女の居た場所を見て見たが、既にそこには誰も居なかった。 「………………母さん大丈夫かな」  今はあの女よりも、妻の容体の方が心配だ。娘の言う事に頷くと二人して再び待つ。  時折あの女が居ないかと、怯えるように警戒したがあの後現れる事は無かった。  自動販売機の音と、時折巡回に来る警備員の足音以外何もしない病院のロビーで過ごす夜はいつも以上に長く感じた。  そうしているうちに、薄っすらと外が青白くなるころに看護師がやってきた。
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