兆し

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「一応、面会時間では無いので今日は会えませんが、手術自体は上手く行きました。ただ………」  申し訳なさそうに看護師がしていると、その後ろの廊下から医師が現れた。 「一応、現状の説明だけさせて頂きます」  そう言い、診察室に4人で向かう事となった。病院特有の匂いが濃くなるのを感じると扉が開く。  診察室内だけ明るく、此処に来てようやく看護師と医師の顔がハッキリと解った。  丸椅子に腰かけると、娘は隣に有ったベッドに腰掛けた。医師も座り看護師がその後ろからカルテを手渡すと、忙しいようでそのまま奥へと駆けて行った。 「今回は命最優先で手術を行いましたので………………」  ながながと妻の容体と、手術がインフォームドコンセント通り執り行えなかった事、何度も危ない状態になった事、そして何より救えなかった箇所が有った事の説明が有った。 「そうですか、足が…………しかし私は命が助かっただけで良かったと思ってます」
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