兆し

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 妻は下半身を失った。しかし私にとって命が助かった事は何よりの救いであった。  故に、下半身が動かないならば、一生をかけて私が介護をしていけばいいとそう自然と思えた。  感謝を言い。今日はもう帰る様に告げられたため娘と二人診察室を出ようとしたその時。 「そう言えば先生、実は…………」  メールの事とあの女が病院付近にきていた事を話すと、医者は”すぐにでも警察に電話しておきます”と言い私達も気を付ける様に言うとその場を離れた。  警察に警備して貰えれば妻も安心だろうと思った。とにかく私は今は娘が心配であった。  こんな事に巻き込まれる事になるとは思いもしなかったが、とにかく娘だけは守りぬかねばと心に固く誓った。  家に着くと”今日は学校は休みなさい”と娘に言い学校に電話した後、自分御会社にも娘の看護をしたいと生まれて初めて有給を使った。  娘はそのまま部屋に寝に戻ると、私は妻の病院での着替え等を適当に見繕うと重い瞼と戦いながら、あの女が万が一来ないとも限らなかった為眠る事は無かった。
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