兆し

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 まるで終わりの無い緊張感だった。世界を見張らないといけないようなそんな不確かで曖昧な中の緊張感。  全てなど見張る事は出来ない。それが解っていても止める事も出来ない。  心音が休まる事は無く、気がつけば半日以上たっていた。娘が起き出すと同時に病院に向かう。  昼間ならばともかく、夜は人気も少なく本当の意味で妻に安心が無い様に思えた。 「お父さん休みなよ、ずっと寝てないんだし」  車の運転中だった。聞き覚えのある音が聞こえると戦慄が走った。 「お父さん携帯鳴ったよ」  ”ありがとう”と言いつつ、全身の毛は逆立つのを感じた。  ましてや車の運転中である、病院に着いたらすぐさま開く事にしそっと携帯をポケットにしまった。
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