一人目

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『貴方の願い、承りました。これから実行致します。お支払は後から通知致します。』 これは、私の携帯電話に届いていたメールだ。何を言っているのか全く分からない。何の覚えもないメール。 「ま、待って!こんな変なメールを出す人なんて居ない....」 私はメールの差出人を見る。そこには....何も書いてなかった。送り主のメールアドレスが在るはずの枠は空欄。 「待ってよ、嘘でしょ?きっと、きっと夢よ。」 私は顔を思いきり叩く。....痛い、痛いのだ。 「....夢じゃないの?なんなの、これ?何の冗談なの?待って、私、昨日何かした?」 私は昨日の夜のことを思い出す。 「アイツ、私のことなんか分かってもないのに知ったような事言って!アイツに何が分かるって言うのよ!たった1ヶ月位しか付き合ってないのに!」 そう、一人で家でお酒を飲んで酔っぱらってたんだ。あの時はぐでんぐでんに酔ってて、暴言吐いてたんだ。 「あの子もそう!アイツは私の彼氏なのよ?なのに私の悪口を言ってアイツの気を引こうとするし!あの子より私の方が良いのに!」 あぁ、違う。二人とも私を思って言ってくれてたのよ。二人はそんなことないの。あの子はちょっと噂好きなだけ。....私、何か忘れてる?何を? 「あぁ、『二人とも死ねば面倒なんて無くなるのに』」 ....え? 私はアイツに電話する。 「はい、桐谷です。」 良かった。無事だ。 「章、だよね?良かった。昨日変なメールが来てて、それで心配で。」 「なんだ、お前か。変なメールってなんだよ。あれか?俺に成り済ました誰かがお前と別れるとか、そういうメールか?」 「違うよ。そういうのじゃなくて」 「『貴方の願い、承りました。』か?」 「え?」 「道理でこんなことになるわけだよな。」 「....章?」 「オマエノコト恨ムカラナ?」 章の電話がいきなり切れる。 「ちょっと!?章!?」 すぐに電話がかかってくる。私はその電話をとる。 「ちょっと!しょ」 「何でこんな事したの?あの噂知ってるでしょ?」 電話からすすり泣くあの子、紗綾の声がする。 「貴方のせいで、私、酷イ目ニアッタンダヨ?」 受話器からは水が落ちる音がする。ピロリン、と携帯が鳴りメールが届いた。 『貴方の願いを実行しました。お支払は、貴方の』 私の後ろの扉が音をたてながら開く。私は何かに引きずり込まれ、私は意識を絶った。
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