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君が隠れているのが見える。ドアの磨り硝子を通して、君が黒い刃をスッとその指で撫でるのがわかるのだ。
私はわざと明るく、久し振りに鼻歌など歌って笑顔を造り、そのドアを半歩下がって開いた。
その刹那目の前、もとい首の前をその刃が通り過ぎた。
「あーあ、わかってたの」
君がそうぼやいて、つまらなそうに嗤う。
ソレが楽しくなってしまった彼女は、快楽、いや、暇潰しの為だけにソレを犯すようになっていた。
しかし私は、何があろうと彼女を守ると決めていた。私は何時も側にいて、良いように利用された上、しばしば、ソレの対象にされた。
彼女の気が変わった時が私の命の終わるときだろう。私は次のドアにも仕掛けが見え、ぎりぎりで回避した。
「クスッ…わかっちゃうの、つまんない」
私は無言で頼まれた物を差し出した。彼女は、同じく無言で受け取ると、興味が無さそうに眺めてから、口を開いた。
「次は、あの村と、病院辺りに行くよ。」
私は頷いて、資料を探し始めた。
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