馬鹿な君へ

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馬鹿な君へ

君はずっと側にいた。 何を奪っても、裏切っても。 僕はそれに安心と恐怖、苛立ちを覚えていた。 君から、君の全てになった僕を奪っても、君はまだ側にいた。 君の想いに気づいたのは、君から僕を奪った後だった。 君は僕が気づいたことに気づかなかった。 君の冷たい愛は、僕が与えた物と同じだった。 虚無の意味に気づかなかったのは、君だけだよ。 僕が君の物になったあの一瞬は、広大な虚無の全てだった。 君が僕の物になったって? それは君の勘違いじゃないか。 君は、とうとう僕の物にはならなかった。 全てを奪っても、君の想いだけは僕の物じゃなかった。 馬鹿で滑稽で狂ってる君のこと、僕はずっと愛してるよ。 初めから最後まで、亡くしたはずの僕の想い、君が持っていたんだね。
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