どんなに遠く離れても

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「………なんで私だけ」 水曜日の5時間目。 私だけ教頭先生から呼び出された。 「ほら、ちふゆさん。手が止まってますよ?」 教頭先生の呼びかけに私は恨めしげな視線を送る。 ニコリと微笑まれ、渋々私は『4-2』の札の立つ学級菜園の草むしりを始めた。 来週、私は引っ越す。 関東のこの町から九州の方に。 今度の引っ越しは5回目。 幼稚園も3回変わり、小学校が変わるのは今回初めて。 一緒に入学し、3年と3カ月過ごした友達とも………もうお別れ。 父と母も九州出身なので、おじいちゃんとおばあちゃんの家は近くなる。 だけど。 ………お別れするのはやっぱり淋しい。 「ちふゆさんはもうここの畑を使うことはなくなりますからね。  お礼も込めて草むしりをしましょう」 苦手な算数の授業を受けずに済むのはいいけれど。。 蒸し暑い6月の外の作業は意外ときつい。 なんとなく腑に落ちない気持ちで私は教頭先生と二人で黙々と草むしりを続けた。 私一人の草むしりを終え教室に戻ると、みんなどこかそわそわした感じがした。 「ちふゆちゃん、5時間目何してたの?」 お友達のマコちゃんが肩までの髪を揺らし近寄ってきた。 「………ずーっと草、むしってた」 「あー、、、大変だったね」 「でも算数の授業受けなくて済んだし」 「………そうだね」 マコちゃんは少し微妙な顔をして笑った。 ちょっと、何か隠し事されてるみたい。 そんな気がした。
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