恋人ごっこ

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雅史は少し不満そうにだけど、渋々と引き下がる。 「もし本当に私が慶久君と付き合ったら嫌だった?」 今更ながら後悔する。 なんでこんなこと聞いちゃったんだろ。 馬鹿みたい。 聞いたところでなんにもならないのに。 「うーん、慶久だったらちょっとな…」 言われて想像以上に傷付く。 慶久君はダメで、他はいいってことだよね。 何それ。 都合のいい召使いが奪われると思ってるわけだ。 「最低。雅史なんか大嫌い」 「え?あっ、おい!」 雅史の制止を振り切って走り出す。 期待した私が馬鹿みたい。 ……なんで、期待? ……何を期待したの? だって、私は恋なんかしてない。 恋は甘酸っぱいものだって誰かが言ってたもの。 こんなに、暗くて苦しくなんてない。 こんなに、自分が嫌になるはずがない。 大嫌い。 軽々しい雅史も。 イライラしている私も。
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