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あれから何だか気まずくて、今日は雅史とは一言も喋らなかった。
主に私が一方的に避けていたのかもしれない。
「あっ、スミちゃん見つけたー」
「慶久君…」
慶久君は私を見て、柔和な笑みを浮かべたまま首を傾げる。
「元気ないね」
「そんなことないよ。元気元気」
気丈に笑顔を作って見せるけど、私は感情が顔に出やすいから多分バレている。
「そっか」
それでも深入りしないでくれるのは彼の優しさで、本当に助かる。
「それにしてもスミちゃん、マッシーに俺のこと話したでしょ。恥ずかしいんだけど」
「え、ごめんね。そうだよね」
考えてみればそうだ。
恋人がいないことを気にする人だっている。
それに雅史は恋愛経験が豊富だ。
少しくらい劣等感を感じていても仕方ないかもしれないのに。
しかし返ってきた返事は私を非難するものではなく、明るい声だった。
「いいよ。俺がどれだけ恋愛について真剣に考えてるか、マッシーに思い知らせてやれたしね」
表情は明るく爽快で、凄く綺麗だと思った。
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