28人が本棚に入れています
本棚に追加
慶久君は付き合うということを重く、真剣に考えてるみたい。
だから、付き合ったことがないっていうのは恥ずべきことじゃなくて、誇れることだと言った。
雅史とは正反対だな。
「スミちゃんに恋人頼んじゃってごめんね。優しさに付け入るようなことしちゃった」
慶久君は本当に申し訳なさそうに、切なそうに頭を軽く下げる。
「ちょっ、やめてよ」
私は慌てて彼の頭を上げさせる。
「私に恋人役なんて似合わないにも程があるけど、少しでも慶久君の役に立てるのならって思ってるんだ。だから、負い目なんて感じてほしくないな」
せっかくの恋人だもの。
彼にとっても、私にとっても、有意義なものにしなくちゃ。
「だから、今日はどっか寄り道してから帰ろっ」
今の私、上手く笑えてたかな?
慶久君が笑顔に変わったから、きっと大丈夫だ。
「…ありがと、スミちゃん」
慶久君の眉が下がった笑顔が、凄く儚くて切なかった。
最初のコメントを投稿しよう!