恋人ごっこ

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慶久君は付き合うということを重く、真剣に考えてるみたい。 だから、付き合ったことがないっていうのは恥ずべきことじゃなくて、誇れることだと言った。 雅史とは正反対だな。 「スミちゃんに恋人頼んじゃってごめんね。優しさに付け入るようなことしちゃった」 慶久君は本当に申し訳なさそうに、切なそうに頭を軽く下げる。 「ちょっ、やめてよ」 私は慌てて彼の頭を上げさせる。 「私に恋人役なんて似合わないにも程があるけど、少しでも慶久君の役に立てるのならって思ってるんだ。だから、負い目なんて感じてほしくないな」 せっかくの恋人だもの。 彼にとっても、私にとっても、有意義なものにしなくちゃ。 「だから、今日はどっか寄り道してから帰ろっ」 今の私、上手く笑えてたかな? 慶久君が笑顔に変わったから、きっと大丈夫だ。 「…ありがと、スミちゃん」 慶久君の眉が下がった笑顔が、凄く儚くて切なかった。
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