恋人ごっこ

8/8
前へ
/38ページ
次へ
慶久君が心配そうに私の顔を覗き込む。 綺麗な顔が悲しそうに歪んでいる。 そうさせているのは私なんだけど。 「大丈夫?どっかで休もうか?」 「ごめん、ぼうっとしてただけ」 最近慶久君に悲しそうな顔させてばかりだ。 私がいつまでもウジウジしてるから、だから周りに心配をかける。 最低なのは私の方かもしれない。 「ね、やっぱり休もう。俺も疲れてきたから」 慶久君が少し焦った様子で私の腕を引く。 さっきまで普通にしていたのに。 「どうしたの?帰った方が…っ」 慶久君はあからさまにしまった、という顔つきをする。 なるほど。私に見せないように気を遣ってくれていたんだ。 視線の先には雅史がいた。 見知らぬ女の子と一緒に、いつもの笑顔で。 肩に手まで置いている。 あいつ、またあんな事して。 また問題が起きるじゃない。 処理するのは誰だと思ってるのよ。 ―――なんで、こんなにショック受けてるんだろ。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加