すれ違い

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すると雅史は蕩けるような柔らかい微笑を浮かべる。 「いや、何となく顔が見たくなってさ」 何それ、やめてよ。 そんな笑顔を向けられたら、誰だって勘違いしちゃう。 「なあ、何でそんなに泣きそうな顔してんの?」 私、泣きそうな顔をしてるの? だとしたら雅史のせい…でもないか。 勝手に私が葛藤してるだけ。 本当は雅史は悪くない。最近避けているのも、私の我が儘だ。 「化粧したまま寝ちゃったから、今顔がぐちゃぐちゃなの。あんまり見ないでよ」 「違う」 違わない。だって事実を言ったもの。 帰ってすぐ倒れ込んだから、今の私の顔は人様に見せられるものじゃない。 「違わない。じゃあ何が違うの?」 雅史は言葉を探して考え込んでから、難しそうな顔をする。 「何がっていうか、雰囲気が違う」 断言している。 言葉がなくて困っているけれど、自分が正しいって確信している顔だ。
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