28人が本棚に入れています
本棚に追加
すると雅史は蕩けるような柔らかい微笑を浮かべる。
「いや、何となく顔が見たくなってさ」
何それ、やめてよ。
そんな笑顔を向けられたら、誰だって勘違いしちゃう。
「なあ、何でそんなに泣きそうな顔してんの?」
私、泣きそうな顔をしてるの?
だとしたら雅史のせい…でもないか。
勝手に私が葛藤してるだけ。
本当は雅史は悪くない。最近避けているのも、私の我が儘だ。
「化粧したまま寝ちゃったから、今顔がぐちゃぐちゃなの。あんまり見ないでよ」
「違う」
違わない。だって事実を言ったもの。
帰ってすぐ倒れ込んだから、今の私の顔は人様に見せられるものじゃない。
「違わない。じゃあ何が違うの?」
雅史は言葉を探して考え込んでから、難しそうな顔をする。
「何がっていうか、雰囲気が違う」
断言している。
言葉がなくて困っているけれど、自分が正しいって確信している顔だ。
最初のコメントを投稿しよう!